「ポピュリズム」について、専門家と語る。

1月7日(土)9:30〜ABC朝日放送「教えて! ニュースライブ 正義のミカタ」にモーリー・ロバートソンが専門家の皆様と生出演します。

今回は「ポピュリズム」について、モーリーが解説します。ここ最近特に耳にする様になっている用語ですが、今一度どういうものなのか、それが各国にどの様な影響を与えているのかについて語ります。

海原ともこ氏 モーリーロバートソン
海原ともこ氏 モーリーロバートソン

▪︎ ポピュリズムとは?

民主主義国家の中で起こる大衆扇動型の政治です。その時の情緒で票が動いた結果、政治のアウトサイダーや素人が瞬間風速で議席や政権を取ることを形容します。日頃は政治を遠く感じる一般人が「このままではいけない」と広く参加する点や、それぞれの陣営の「正義」に酔って運動を拡大させる側面もあります。また、目先の不満解消が原動力となるため、実際に政権交代が行われた後に劇的な効果が見られなかった場合は、急速にしぼみます。エンターテインメント性の強い政治も特徴です。

▪︎ 現在のポピュリズムは?

現在のポピュリズムは日本では左派、欧米では右派へと振り切れる傾向があります。
日本では反原発、反基地、反安保法制、反安倍政権などがセットになっており、従来の社共陣営の主張の範疇を出ませんが、ソーシャルメディアでのプロパガンダ拡散と東電糾弾、デモによる国会前への動員、文化人や芸能人が多数運動に飛び込むこと、SEALDsなどのマスコットキャラが登場する点などでポピュリズムの色合いが強いです。去年の8月にSEALDsが解散したタイミングで社共・民進党が道連れで弱体化したように見えます。

一方、欧米のポピュリズムはもっと深刻な方向に向かっています。トランプ氏の当選はアメリカ社会を深く分断する経済格差や将来への悲観、そして8年間のオバマ政権で自身の生活が改善されなかったと感じるアメリカ人が多くいたことを物語っています。トランプ氏がならず者のような暴言を放ち、下品に振る舞えば振る舞うほど「壊し屋」としての期待が高まり続けています。既存の政治は共和党も民主党も共に「エスタブリッシュメント=既得権益」へと吸収されてしまうため、変化は期待できない。したがってまったく政治経験がなく、見ていておもしろいトランプ氏に期待を投影しているように思えます。

またEUではドイツ、フランス、オランダ、イギリス、イタリアオーストリアなどで極右政党の躍進が顕著です。移民・難民への警戒心や嫌悪感、EU中央政府に加盟国政府の決定権を握られてしまっているとの不満、EU内の富の分配への憤り、冷戦中の団結心が薄れたこと等など、多数の要因が相互作用しています。EUのポピュリズムの波に乗ったそれぞれの極右政党はEU解体、NATO解体、自由貿易反対、ロシア好きなどが共通しています。

▪︎ なぜ、現在広まっているのか?

各国の経済が長期的に低迷していることが第一に挙げられます。加えて中東情勢や中国との関係などが複雑化しているため、20世紀にはっきりしていた「自由と正義」が見えにくくなっており、自分で考えて判断するのが面倒になった人が増えたことも大きな要因です。なかなか「夢」を持てなくなったのは、既存の政治が悪いという決めつけのような思考も見え隠れします。英雄のような指導者が出現して、積載する問題を一気に解決してくれるのではないかという「甘い期待」が各国の各層に浸透しているのではないでしょうか。言わば、かつては固いパンや肉を咀嚼して熟考する能力があった民主国家の個々人が豊かさの時代に甘やかされ、流動食やファストフードのような「正義」に飛びつくようになっているのかもしれません。

▪︎ この現象にモーリーが感じること

官僚と実務型の政治家にだけ国の運営を任せると、一部の知識人や既得権を持つ階層の人間が政治に熱くなる一方で庶民は受け身になります。ポピュリズムは政治を身近なものとして感じさせてくれる利点があります。しかし同時にその「身近さ」は「自分たちでトランプ氏を大統領にすれば全部変わる」という幻想を抱かせるので、興奮のために興奮しているに過ぎません。ポピュリズムが定着すると、その都度付和雷同する大衆の声が政治を飲み込み、長期的な視点に立った設計が難しくなります。また、国民が徐々にバカになっていくという副作用もあります。良薬は口に苦し。自分たちの耳に痛いことを言ってくれるリーダーも必要です。

ABC朝日放送「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」オフィシャルサイト

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