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【特別掲載】新刊「挑発的ニッポン革命論」発売記念!

10月26日(木)モーリー・ロバートソンの新刊「挑発的ニッポン革命論〜煽動の時代を生き抜け〜」(集英社)が発売されます。

今回、発売を記念して本の一部のをチラッとお見せします。モーリーのマインドとその発想に新しい視点が生まれます。

「特別掲載版・挑発的ニッポン革命論」、是非お楽しみ下さい。

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【特別掲載】挑発的ニッポン革命論〜煽動の時代を生き抜け〜

僕の目標は、日本に「革命」を起こすことです。ひとりひとりが自分を解放し、世界をフラットに見る視点を持ち、自分の頭で考えるべきことを考え、タブーなきディベートができるようになる――そんな「革命」。

今、ネット上では思想的に右か左に大きく偏った人の声が目立ちます。けれど、現実の世界で一番多いのは、どちらにも賛成できない中間層です。彼らは、はみ出るのを恐れて何も言わない。何か問題があっても、発言も行動もせず、ただ息をひそめているだけ。そんなサイレント・マジョリティを解放したいのです。この本を読んだ人たちがその第一歩を踏み出してくれたなら、こんなにうれしいことはありません。

日本の大衆には、重要なチョイスの責任を引き受けなくていいという潜在意識――最後はどうせお上(日本政府やアメリカ)が決めるんだ、という〝カラ約束〟や〝諦め〟――が骨の髄まで染みついてしまった世代が2、3世代います。いわゆる戦後レジームの影響なのかもしれませんが、みんなが自分にとって気持ちいい殻の中に閉じこもるばかりで、不都合なことは見て見ぬふり。ガチンコのディベートが起きない。

日本の左派野党が一向に存在感を示せない理由のひとつはここにあります。ハードなディベートがない社会では、反体制側の主張が弱々しい。もともと思想を共有している仲間だけでいくら盛り上がっても、批判に耐え得る主張は生まれません。よく考えてみれば現実味のない〝美しい物語〟を、無意識の部分で「まあ実現しないだろうな」と思いながら言い続けるだけ。その結果、体制との対話からますます遠ざかってしまうのです。

思い返されるのは、僕がハーバード大学に在学していた1980年代のアメリカです。当時のアメリカは、1960年代末からベトナム反戦運動、公民権運動、ゲイライツ運動などが盛り上がったことの反動もあり、保守派が盛り返して共和党のレーガン大統領が強固な政権基盤を築いていました。大学界隈にはリベラルな思想信条を持つ〝進歩派〟が多かったのですが、彼らはしょっちゅう「このままでは民主主義が終わる、アメリカが終わる」と言いながら、現実を直視せず、戦略も対案もなく、ただ綺麗事を並べてレーガン政権を批判するばかりでした。そんな体たらくでは狡猾な共和党にダメージを与えることはできず、むしろ保守派の結束を強めるばかりだったのです。……この状況、どこか今の日本とダブって見えませんか?

ただしその後、次第にアメリカのリベラルは過去の失敗を学び、ハードなディベートを日常化させていきました。その結果、もともと反体制側だった人が体制の内側に入り込み、仕組みそのものを変えるような「革命」があちこちで起こります。ビジネスで大成功し、ルール自体を変えてしまったアップルのスティーブ・ジョブズがまさにそうですが、ただのアンチ・エスタブリッシュメントではなく、中に入り込んで対流を生み出す――それが本当のカウンターカルチャーです。アメリカ初の黒人大統領であるバラク・オバマ前大統領も、広い意味でいえば出発点はカウンターです(トランプに言わせれば、オバマもエスタブリッシュメントの一員だということですが、彼の出自や、在任8年間でやってきたことを見れば、そうではないことは明らかでしょう)。

このようなハードなディベートを成立させるためには、その参加者たちが徹底的に「世界」を知っている必要があります。終わりの見えない中東地域での紛争。いつ着火するかわからない爆弾を抱えつつ巨大化する中国。行き過ぎた資本主義の被害者たちが不満を爆発させ、社会や政治を不安定化させている欧米諸国。こうした混乱に乗じて存在感を増すロシア……。こうしたあらゆる要素が複雑に絡み合う世界の現状を無視して、「日本人や日本文化は特別に素晴らしい」とか、「改憲論者は戦争を起こす気だ」などと無邪気に主張する人のなんと多いことか。そこにはそれぞれの小さな美しさがあり、言いたいことを言うだけで気持ちいいのかもしれませんが、結局それでは世の中は何ひとつ変わりません。それどころか、そんなもろい人々は、一歩間違えば兵器化された情報の餌食となり、煽動の波にあっという間に飲み込まれてしまうでしょう。権力者も、排外主義者も、差別されてきた人々も、そしてテロリストも、世界のあちこちでズル賢く社会を変えたり、自分たちの利益を実現したりしているのですから……。

ガラパゴスな日本では、今はまだ狭くて細かい〝棲み分け〟がありますが、今後グローバル化がさらに進めば、あらゆるものが衝突しつつ存在するカオスな社会になる。そんな未来への漠然とした不安を持つのは無理からぬことですが、だからといって若い人たちが変化を恐れ、小さなノイズに反応して他者を叩いたり、〝決まり〟を守らない人を糾弾したり……と潔癖症になってしまうのはもったいないし、危険なことでもあります。保守的・排他的になるのではなく、数パーセントの不利益やカオスを「多様性」として受け止めて許容し、それ以上の利益を生み出す社会にしていきたいのです。本書では、そのために知っておくべき世界の事象や、そこに至る歴史の流れをできる限り紹介していきたいと考えています。

「挑発的ニッポン革命論〜煽動の時代を生き抜け〜」モーリー・ロバートソン、集英社   Amzon.co.jp

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